さらに「警察に言っても何もできないと思った」と考える人も3割以上おり、この割合は過去数年間で増加傾向にあります。
日本でも傾向は類似しており、ある調査研究ではストーカー被害に遭った人のうち警察や行政など公的機関に相談した人はわずか10.5%でした。
特に恐怖を感じる被害を受けた女性でも、相談率は15%程度に留まっています。
被害者が通報を思い留まる背景には、心理的・社会的な障壁が存在します。
日本の調査では、警察に相談しない理由として「警察に相談しても解決しないから(48.9%)」「相談すると後が面倒そうだから(48.5%)」「プライベートな問題で相談しにくいから(45.4%)」といった回答が多く、「警察も丁寧に対応してくれないと思うから」という不信感も40.8%に上りました。
さらに、加害者からの報復への恐れや、「恋人同士の揉め事を他人に話すのは恥ずかしい」という感情、あるいは親密な関係の中で暴力がエスカレートと沈静化を繰り返す「暴力のサイクル」に巻き込まれ、誰かに助けを求める判断が麻痺してしまうケースもあります。
こうした要因が重なり、被害者は警察への通報をためらいがちで、被害が深刻化するまで孤立してしまうことが少なくありません。
2:ストーカー通報に対する警察対応の実態

しかし悲しいことに勇気を出して警察に通報しても、被害者が直面する対応には地域や機関によってばらつきがあり、中には「怠慢」とも言える不十分な対応が指摘されています。
米国の全国調査では、警察に通報したストーキング被害者の約半数(49%)が捜査当局の対応に満足していないと回答しました。
同調査では、約5人に1人が警察は何も行動してくれなかったと感じていることも明らかになっています。
被害者にとって、せっかく勇気を出して通報しても十分に動いてもらえない現実があります。