ストーカー被害への社会的関心が高まる中、被害者が訴える「警察など公的機関の怠慢」が大きな問題となっています。

近年も、神奈川県川崎市でストーカー被害を訴えていた20歳女性の失踪事件をきっかけに、警察署前で家族や市民が「警察の怠慢が殺人を招いた」と抗議する事態が起こりました。

1999年の桶川ストーカー殺人事件でも警察の対応ミスが指摘され、ストーカー規制法が制定されて以降も、同様の悲劇が繰り返されています。

なぜ被害者は公的機関の対応に不信感を抱き、どのような構造的問題がその背景にあるのでしょうか?

目次

  • 1:通報のハードル、被害申告を阻む心理的壁
  • 2:ストーカー通報に対する警察対応の実態
  • 3:なぜストーカー対応で怠慢が起こるのか?
  • 4:警察に門前払いされたと感じた場合どうするか?

1:通報のハードル、被害申告を阻む心理的壁

1:通報のハードル、被害申告を阻む心理的壁
1:通報のハードル、被害申告を阻む心理的壁 / Credit:Canva

ストーカー被害者が警察に助けを求めるまでには高いハードルがあります。

多くの被害者は「警察に言っても真剣に取り合ってもらえないのでは」と不安を感じ、通報をためらいます。

英国の調査によれば、被害者が警察への通報を躊躇する主な理由は、「報告しても状況が悪化するかもしれない」「警察が何をしてくれるかわからない」、そして「自分の訴えを深刻に受け止めてもらえないのではないか」といった不安でした。

こうした不安から、深刻な被害に発展するまで誰にも相談できずに抱え込んでしまうケースも少なくありません。

実際、ストーカー被害全体から見ると警察への通報率は非常に低い現状があります。

米国司法統計局の調査では、2019年にストーカー被害に遭った人のうち警察に被害を届け出たのはわずか29%に過ぎませんでした。

被害者が届け出をしなかった理由として最も多く挙げたのは「その被害は警察に報告するほど重要ではないと感じた」ことで、全体の約40%を占めました。