同じく学習の2番目の「他人の絵柄の追加学習」については文化庁小委でも以下のような質疑があった。

【澤田委員】大変興味深いお話ありがとうございました。クリエイター側の懸念として、自分の描いた絵の画風とかを追加学習されて、自分の画風で全く別の絵を描かれてしまうということについて懸念を持たれている方がおられます。それが著作権法上どう評価されるのかという問題は別にあるとは思うんですけれども、そういった懸念について、先生御自身の御意見としてはどのように考えておられるか、教えていただければと思います。

【うめ 小沢高広先生】そうですね。法律の部分とは別のところの気持ちとしてそれをどう受け入れるか、受け入れられないかというところはすごく難しいところで、ここは本当に人にはよると思うんですけれども、絶対やめてくれという人もいれば、いや、気にしないよ。確かに日本には2次創作というふうな文化もあって、それが創作者の揺り籠にもなっている部分もあるというところを考えると、十把一からげに駄目ということもできないけれども、それを嫌だという気持ちも大変よく分かるところであります。なので、そこのところというのは何か軟らかいマナーみたいな形でうまい落としどころに行くといいかなとは思っています。

「柔らかいマナーみたいな形」といえば、ソフトローが思い浮かぶ。ソフトローとは、「民間で自主的に定められているガイドラインのほか、行政府が示す法解釈等も含む広い概念」で、「作成や改変の容易さ、個別状況に合わせた作成・運用ができるなど、法改正によらずに、時代の変化に対応した柔軟な規範の変更が可能という利点がある」とされる。

著作権法の分野でも、上記30条の4の柔軟な権利制限規定を導入した2018年の改正で、ガイドラインの策定など必要な対策を講ずることとする附帯決議が付けられた。

学習の3番目に「他人の絵柄を追加学習したデータを販売するあたりがグレーゾーン?」とあるが、非享受利用を認めた30条の4のただし書きは、「著作権者の利益を不当に害する場合はこのかぎりではない」としている。このただし書き該当するおそれがあるからである。