とはいえ、マインド・ブランキングは過負荷や病気だけに起こるわけではなく、まったく正常な覚醒状態でも表れることがあります。
何の作業もしていない休息時でも、人はときどき突然「何も考えていなかった」と報告することがあるのです。
新たなレビューによれば、マインド・ブランクは疲れている時や退屈している時だけでなく、どんなタイミングでも一様に生じうることがわかりました。
要するに、短い間意識が空白になるというのは、多くの人にとってさまざまな状況で起こりうるごく日常的な現象なのです。
それでは、頭が真っ白になったとき、脳内ではいったい何が起きているのでしょうか。
この疑問に迫るため、研究者たちはfMRIによる脳スキャンやEEG(脳波計測)を使い、ボランティアの脳がブランク状態に入ったり抜け出したりする様子を観察しました。
その結果、マインド・ブランキングに先立ち、かつ同時に起こる特有の神経的特徴が見つかりました。
ブランクが起こる直前には、脳全体のいくつかの領域が活動を弱めたり同期を失ったりし始めます。
特に、前頭部、側頭部、そして視覚を司る部分などで変化が観察され、頭が真っ白になる直前の段階で通常の脳内コミュニケーション回路が徐々に停止に向かい、意識が薄れていく下地ができるようなイメージです。
実際にマインド・ブランクが起きている間、脳と身体の活動には全般的に下降シフトが見られます。
心拍数は下がり、血圧はわずかに低下し、瞳孔が縮んで注意力の低下がうかがわれます。
同時に、脳の電気活動には劇的な変化が生じます。
EEG記録によると、通常は複雑で活発なパターンを示す脳の波形が、より遅く同調した波へと単純化していきますが、これは深い睡眠や麻酔下の状態で見られるパターンとよく似ています。
こうした瞬間、脳は仕事中に眠り始めているようにも見えるほどです。
実際、研究者たちはマインド・ブランキングには「局所的な睡眠」エピソードが生じている可能性があると説明しており、人が起きたままでも脳の一部だけが眠りに入っているように見えると指摘しています。