私たちは誰しも、頭の中が真っ白になるあの落ち着かない瞬間を経験したことがあるでしょう。

たとえば試験問題をじっと見つめているときや、会話の途中で、ふと頭の中に何も浮かんでいないことに気づく場合があります。

雑念もなければ、内なる声もなく、ただ頭の中には何もない――まさに空虚な状態です。

こうした一瞬の空白は「報告可能な内容がまったくないように思われる瞬間」として、長らく謎のままでした。

しかしフランスのソルボンヌ大学(Sorbonne Université)で行われた研究によって、科学者たちはこの現象(“マインド・ブランキング”と呼ばれる)が脳の一部が“局所的に眠ってしまう、脳内金縛りのような現象であることが示されました。

しかもこのマインド・ブランキングは実に覚醒時経験の5〜20%を占めていることが明らかになったのです。

あなたの脳もいま、この瞬間にこっそりスリープモードへ落ちているのではないでしょうか?

研究内容の詳細は2025年04月24日に『Trends in Cognitive Sciences』にて発表されました。

目次

  • 頭真っ白な状態は「ボーっとしている」とは違う
  • 「脳内真っ白」の正体は脳内金縛りだった
  • “無”が語る意識:静寂もまた脳の声

頭真っ白な状態は「ボーっとしている」とは違う

頭真っ白な状態は「ボーっとしている」とは違う
頭真っ白な状態は「ボーっとしている」とは違う / Credit:Canva

マインド・ブランキングとは、頭の中にまったく何も浮かんでこない、いわば“意識が空っぽになる”状態を指します。

もし「考えようとしても何も思いつかない」「会話中に突然何を言おうとしていたのかさえ忘れてしまった」という経験があるなら、それがまさにマインド・ブランキングかもしれません。

じつは多くの人が、こんな不可思議な瞬間を味わったことがあるはずなのです。

以前は、この頭の空白状態が、いわゆるマインド・ワンダリング(あちこちに思考が飛び回る状態)の一部と捉えられてきました。