海女さんたちの身体に刻まれた“進化の足跡”を調べることで、人類の生理適応の仕組みについて新たな発見が得られるかもしれません。

実際、今回特定された血圧コントロールに関わる遺伝変異の研究は、高血圧症や妊娠高血圧(子癇前症)といった疾患の予防・治療に役立つ可能性があります。

一方で、長年にわたり培われてきた済州島の海女文化は消滅の危機に瀕しています。

その伝統を未来に伝えていくことは文化的に意義深いだけでなく、科学的にも貴重な「生きた人類進化の資料」を守ることにつながるでしょう。

海女さんたちが体現する人間の適応力には、まだ私たちの知らない秘密が数多く残されているのではないでしょうか。

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元論文

Genetic and training adaptations in the Haenyeo divers of Jeju, Korea
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2025.115577

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部