構造改革で「価格の適正化」と「従業員のモチベーションアップ」を推進。並行して仕入れ改革も進める
既存店舗の構造改革として、同社は「価格の適正化」に注力していった。
「以前は原価率が高いことを売りにして集客をしていたわけですが、時代はデフレからインフレに変わりました。これに対応するために、品質を担保するための原価はしっかりかけたうえで、それをボリュームでカバーするのではなく、お客様にも理解を得られる形で、適正にお支払いいただく価格設定を追求しました。
そしてもう1つ、黒字転換の大きなバネになっているのが、従業員の定着率が上がったことです。コロナに苦しめられながらひたすら店舗クローズを続けていた時期は離職率も高く、これが続けばお客様に提供する商品の質やサービスに響く、という危惧がありました。そこで、立て直しに協力してくれる従業員に報いるため、福利厚生の見直しと、新卒採用に当たって奨学金の返還資金を負担する制度を創設。キャスト(アルバイト)からの社員登用が増えましたし、従業員の前向きさが戻っている手ごたえを感じます。新商品の開発や、肉マイレージが貯められるアプリの改善も進めています。とにかく総力戦で、思いつく改善策をすべてコツコツやってきたということに尽きると思います」
ここにきてさらに、インフレによる原材料のコストアップが加速している。この対応策はどうか。
「まず、牛肉に関しては契約の期間を以前より長くしました。米国や豪州からの牛肉の調達に当たり、基本の契約期間は3カ月です。これを6カ月に延ばすことで、延ばした期間は予期しないコストアップを避けることができます。全国規模で均一なサービスを展開するためには、節約ももちろん大事ではあるのですが、それ以上に仕入れ価格を平準化させることが重要なんです。結果、原価率をコントロールしやすくなり、お客様に提供する商品の質やサービスも安定させることができます。安く仕入れられたから安く売る、原価が上がったから価格もバンバン上げるとやっていたら、お客様はついてきてくれないですよね。
ここにきてお米もとんでもなく上がっていますが、お客様にしっかりと美味しいご飯を提供するという部分は変えていません。昨年11月にライス・ライス関連セットを一律30円の価格アップをさせていただきましたが、ライスの大盛り無料、おかわり1杯無料は続けています」
大盛りやおかわりで追加料金を取るように変えるのは簡単だが、顧客に対するサービスの低下となる。そして、さらに影響が大きいのが「従業員のモチベーション」だという。大盛りやおかわりをお客様に申し付けられるたびに、有料になりましたと頭を下げてもらっていては、お客様も従業員もその都度、イヤな思いをするだろう。これでやる気がそがれてしまってはあまりにもったいない。であれば、コストアップはできるだけ企業努力の中で吸収し、良いサービスは少し値上げをさせてもらってでも続けることを選択した、と健作氏は語った。