27億円の営業赤字から立て直しを図る最中に新型コロナウイルスが襲来

「それでも売上げが拡大し続けていけば、スケールメリットでコスト増大を吸収していくことは可能です。そのためにも積極出店を行っていたのですが、店舗数が増えるにつれて商圏の重複が起こるようになり、店舗当たりの収益が減少に傾いていきました。

 たとえば池袋、新宿といった好立地であれば、潜在顧客が多いので店舗数が増えるほど利益はついてきます。ここで経営判断を誤ったのが、郊外や地方の出店においても都市部と同じようなドミナント(地域独占)戦略をとったことでした。郊外の1店舗で2000万円の売上げがあったとして、これが3店舗になり店舗当たりの売上げが1000万円に減少すると、合計しても3000万円の売上げにしかなりません。弊社は元々、薄利多売なビジネスです。そこに売上げの伴わない店舗運営コスト増大が降ってきたわけですから、利益がついてこなかったのも当然のことでした。その結果、2019年12月期には過去最高の売上高675億円を記録したものの、上場以来初となる、27億円もの営業赤字を計上することになります」

 まず出店計画をすべて中止し、これ以上の出血を止めなければいけない。当時、CFO(最高財務責任者)を務めていた健作氏はこう主張し、2020年以降の出店を取りやめて原価の見直しや既存店舗のサービス向上に取り組んだ。これに加えて、食い合いが大きい地域から店舗閉店を進め、2019年には41 店舗を閉鎖。閉店コストはかさむ一方だったが、縮小均衡のための向こう傷は避けようがない。金融機関の理解を得てなんとか資金繰りをつなぎ、薄氷の上を歩む日々が続く同社を、無情にも新型コロナウイルスという特大の災厄が襲った。

「ご承知の通り、弊社を含む全国の飲食店は2020年春からたびたび、休業や小規模・時間制限付きの営業を余儀なくされました。飲食事業は、日々の売上げがなくなれば当然、運営資金が回りません。ひたすら閉店、撤退の期間が続き、2021年までに267店舗を閉鎖しました。苦渋の決断でしたが、新株予約権の発行による資金調達も行い、既存の株主様にもご迷惑をお掛けしました」