産業化は産業革命期以降の200年間という時代を牽引してきたが、その端緒は具体的にいえばエネルギー革命であり、風力・畜力・人力レベルのエネルギーから石炭使用による蒸気機関の発明と応用により、そして後半では石油エネルギーへの転換により、それらの産業を担う企業人が当然ながら力を持ってきた。

すなわち、産業化は権力構造を変化させ、社会全体の職業構造を激変させ、たくさんの専門職を必要とすることにより、義務教育や高等教育を受ける若者を増やして、国民の生活水準を向上させたのである。

なぜなら、産業化により「エネルギー革命」を通して生産力水準が急上昇し、それを支える労働市場が激変し、大衆消費社会という新しい「近代産業社会後期」(富永 1986:265)が生まれたからである。

「水準変動」と「構造変動」

さらに社会変動は「水準変動」と「構造変動」に細分化される(吉田、1974)。両者は補い合って、社会変動がより鮮明になる。なかでも産業化は生産構造に直結しているので、国民の「生活水準」にも敏感である。

しかし、その延長線上に存在する国際化それに少子化や長寿化は、「構造変動」を引き起こしつつ、その結果として「水準変動」ももたらす。国際化や少子化や長寿化は人口や消費行動を介して、社会構造へ直接に働きかけるからである。

富永や吉田の研究によって、学界全体に「社会システム発展=システムの適応能力増大+構造変動」がほぼ理論的に共有されるようになった。授業の開始段階で、長谷川が担当した「産業化」のエッセンスを、私はこのように要約して講義に使った。

都市化

産業化とセットで論じた都市化の講義は、もっとも有名なワースの「アーバニズム」研究成果から始めた。この分野は修士課程から専門的に学んでいたから、他のゼーションよりも知識があった。

「アーバニズム」とは1930年代までのシカゴを素材として、都市の特徴を大量人口、高密度、高い異質性の三点にワースが整理した枠組みであり、それ以後の都市研究者に強い影響を及ぼしてきた(ワース、1938=2011)。