また世代の短さと大人になる時間の短さも際立っています。
オタマボヤは世代時間が約5日間と短く、卵の受精からわずか10時間で成体と同じ形態が完成するという驚異的なスピードで発生が進みます。
これは脊索動物として例外的な速さであり、どのような遺伝子制御でそれが可能になっているのか興味が持たれていました。
いったいどんな仕組みがオタマボヤの超高速な一生と成長を支えているのでしょうか?
オタマボヤは「受精から生まれるまで3~4時間」「大人になるまで10時間」しかかからない:高速発生の仕組み

なぜオタマボヤはそんなに生き急いでいるのか?
謎を解明すべく研究者たちはオタマボヤの全発生過程にわたる遺伝子発現プロファイルを網羅的に解明し、近縁のホヤとの比較を行うことにしました。
具体的にはオタマボヤの受精卵から成体になるまでの各段階でどんな遺伝子が働いているかを網羅的に調べ、そのデータベースを構築するという壮大な計画です。
これにより、オタマボヤの発生プログラムの全貌と近縁種との異同が明らかになると期待されました。
すると、幾つか奇妙な結果が得られました。
1つ目は発生初期からの活発な遺伝子活性です。
受精後ごく初期(16~32細胞期)の胚で、既に約950個もの遺伝子が初期発現を開始していることが判明しました。
これは母親由来の物質だけに頼らず、胚自身のゲノムが非常に早い段階から動き出すことを意味します。
典型的な動物発生では受精卵由来のmRNAやタンパク質により初期の発生が進み、ある段階でゲノム活性化が起こります。
しかしオタマボヤではそのスイッチオンが極めて早期に起こるようです。