(※普通なら外観的に炊飯器と土鍋はみればわかりますが、ここでは見た目だけではどちらかわからない状態とします)
さらに6時50分、ふたを少し開けると水分がほとんど飛び、米が立っている様子が分かりました。「あと10分で完成」という炊飯器のタイムラインとぴったり重なり、土鍋の可能性はもはやわずかです。そして締め切りの7時、ふたを開けるとご飯は完璧に炊き上がっていました。ここで「炊飯器が使われた」と考えるほうが、土鍋より何倍ももっともらしいという判断が決定的になります。地球生命の研究もまったく同じ構図です。地球というキッチンには「生物が暮らせる寿命」という締め切りがあり、最古の化石(37億年前)、炭素同位体の手がかり(41億年前)、そしてLUCAが42億年前に生きていたという新証拠という具合に、時間の手がかりが段階的に増えるたび、「生命は数億年で誕生した」という早炊きシナリオの信頼度が跳ね上がっていきました。
地球に生命が住めなくなるまで数十億年程度という時期になって人類が誕生したのもポイントです。
締め切りまでに人類という“最後のおかず”をそろえるには、悠長な土鍋コースでは到底間に合わない──だからこそ、ベイズ分析は「速い生命誕生こそ自然な説明だ」と結論づけているのです。
宇宙に生命が溢れるか否かの分岐点

この研究が明らかにしたのは、たとえ「観測者バイアス」を考慮してもなお、地球のような条件がそろえば生命は思いのほか早く出現しやすいということです。
つまり、私たちが都合よく生命の早期誕生を経験しているのではなく、同じような環境であれば生命は比較的短期間で自然発生する可能性が高いという意味合いになります。
これは、長年にわたり議論が続いてきた生命の起源に関するテーマを大きく前進させる画期的な知見といえるでしょう。
ただし、この結論は「宇宙のどこにでも生命がある」ということを保証するものではありません。