その結果、約37億年前(地球誕生から約8億年後)という最古の微化石の証拠を用いた場合、「生命は早く誕生した」という仮説が「遅かった」よりも約3倍有力となりました。

また約41億年前の炭素同位体痕跡を用いると、その比は約9倍に上昇しました。

これらはいずれも「早期アビオジェネシス(迅速な生命発生)」を支持する傾向を示していますが、統計学的に「強い証拠」と見なされる目安(およそ10対1つまり10倍)には達していません。

ところが、最新の研究で提案された約42億年前というLUCAの年代を反映させると、オッズ比は初めて統計的な「強い証拠」の基準である10対1を超え、およそ13対1という値になりました。

実際、仮に地球の生物圏が想定より短命であった場合や、逆に太古の地質時代に文明が出現していたといった極端なシナリオを考慮に入れても、オッズ比は常に10を上回ることが示されています。

これらの結果は、「単に私たちが観測者として存在しているから早いように見える」というだけでなく、地球のような環境では本当に生命が短期間のうちに自然発生しやすいという可能性を強く示しています。

キッピング氏は「今回初めて、地球のような条件下では生命が速やかに誕生するという仮説を裏付ける強力な証拠が得られました」と述べています。

ヘイズ分析について

ヘイズ分析とは簡単に言えば、あり得そうなシナリオを特定する手段となります。

たとえば家族がそろって夕食をとる午後7時が締め切りだとして、最初は「今日のご飯は早炊き炊飯器か土鍋か、五分五分だろう」と何となく思っていたとしましょう。今日の料理当番が弟だったのなら、ルールに間に合うようにするという期待もあります。そこであなたが台所に入るのは6時40分。まだふたを開けず、湯気の有無だけを確かめると、盛んに蒸気が漏れているのが見えました。弟が完全に当番をすっぽかしたわけでないことが確定します。また蒸気の噴出加減から「30分で炊ける炊飯器なら順調、90分かかる土鍋ならかなり厳しい」と感じ、弟が使用したのが炊飯器である見込みがぐっと高まります。