苦労が大きかったが、1年かけて学んだ知識と技術が、その後急速に普及した研究室でのパソコンでもそのまま活かせるようになり、北大定年退職までの科研費による収集した大量データの分析にも威力を発揮するようになった。パソコン技術も初歩統計学の知識についても、根性をいれて学習した甲斐があった。

ワープロの購入

北大に移って最初に購入したのは、当時発売されたばかりのNECのワープロ「文豪」であった。それまでの35年間は原稿用紙やノートに万年筆やボールペンで書いた経験しかなく、ワープロで「文字を打つ」行為も恐る恐る始めたに過ぎない。

講義ノートを手書きで作成するのではなく、ワープロの練習にもなるため、文字を打ってノートを作り始めた。これも私にとってはライフスタイルの大きな変化であり、適応するのには1カ月ほどかかった記憶がある。

「文部省科学研究費」への応募と採択

ワープロ作成書類の第一段階として、1986年~88年の3か年にわたる「文部省科学研究費」向けに「都市高齢者の生活構造の比較研究」という主題をまとめ応募した。初回ながら運よく採択されたので、86年夏に小樽市、87年夏は久留米市、88年夏は札幌市で60歳~80歳までの市民500人をランダムサンプリングして、ゼミ生による訪問面接調査をすることが可能になった。

調査時期を夏にしたのは、それまでの福岡県とは異なり北海道の冬は豪雪のために徒歩による訪問面接調査が不可能であるとの判断による。

前期の定期試験が7月末に終了することを前提にした調査プランを作成した。現地までの往復交通費、宿泊費、学生調査員への調査協力費(バイト代)支払い、ワープロによる作成した調査票の印刷代、3年目の終りの『報告書』印刷製本代などが科学研究費の内訳であった。会計係への入金を確認して、8月上旬の4日間にゼミ生による調査を行ったが、この日程は北大定年退職まで変わらなかった。

小樽調査