それによってデータ処理ソフトSPSSがかろうじて使えるようになり、コンピューターによる簡単なデータ処理の技術が身に付いた。

ところが、実際に打ち出されたデータの分布や記号が分からない。統計学の基礎がなかったために、せっかくのデータの分布を読み解けないことに気が付いたのである。そこで赴任後に親しくなった経済学部統計学の助教授に相談したところ、初等統計学のテキストとしてホーエル『初等統計学』(培風館、1970)を紹介してもらった。

ホーエル『初等統計学』の精読

昼間は授業やその準備や会議などでこの本を読めないので、自宅で本気で取り組むことにしたが、分からないことが多かった。

しかし、一方ではコンピューター操作によりSPSSでの簡単なデータ処理ができるようになったので、『初等統計学』のなかでの度数分布、標準偏差、正規分布、確率、ランダムサンプリングなどの章を少しずつ読み進めた。

理解不能であれば、翌日統計学の助教授の研究室に出向いて、直に教えてもらった。そして調査データの解析での基本である「クロス表」の作成に関して、そのχ2検定(カイ自乗検定)の方法と根拠までもしっかり学習した。ここまでで半年間はかかったように記憶している。

電卓でのχ2検定法にも習熟

SPSSソフトでは打ち出したクロス表の下に自動的にχ2値(カイ自乗値)が出るので楽であったが、社会学講義に含めていた「社会調査」の授業でも90分を使ってχ2検定法を受講生に実習をさせようと思い、電卓での計算式にも習熟した。これにより、自らのデータ処理や講義での実習にも自信が得られるようになった。

北大移籍後約1年間で、第1回で紹介したミルズの社会学公式(社会学=IBM+リアリティ+ヒューマニズム)のうち、IBMにすこし近づけたと思えるようになった。

コンピューターの操作も統計学の独習にも縁と運

コンピューター操作の練習では助手の二人に交替で教えてもらい、統計学では経済統計学の助教授によるアドバイスを受けたという縁と運により、自前のテーマでの計量的な社会調査を行えると判断した。