ボールがサイドを割る度に財前が蹴りに行き、長身FW船越優蔵(当時国見高校、現U-20日本代表監督)目掛け、ロングボールを放り込む戦術が採られたのも自然な流れだろう。
この大会でポジティブな結果が得られれば、FIFAは1994年のW杯アメリカ大会終了後にキックインを正式ルールとして採用する方針だったという。しかし、観戦した日本のファンからも世界からも、このルールに対し否定的な意見が多く、この大会のみでキックインルールはお蔵入りすることになる。
しかし時は経ち、現在のサッカーはロングスロー全盛だ。中にはハーフライン近くからゴール前にボールを投げ入れる“遠投力”を誇る選手もいる。DFの立場からすると、足で蹴り込まれたFKよりも、スローインのボールをクリアする方が難しいという。ボールそのものの勢いが異なるからだ。
逆にキックインが採用されていたとすれば、スローインが戦術に組み込まれることはなく、プレー時間が減るだけではなく、ボールの蹴り合いに終始する単調なスポーツとなってしまったのではないだろうか。

オフサイド(1863年導入、1925年改正)
19世紀のイングランドで誕生したフットボール。当時は各地のパブリックスクールで各々のローカルルールで試合が行われていた。
1863年、ルールの統一のためにロンドンで会議が開かれた。しかし、「手を使うことを認めない」と主張するイートン校と「手を使うことを認める」と主張するラグビー校との間で話し合いは決裂。この結果、イートン校を中心としたパブリックスクールの間でフットボール・アソシエーション(FA)が設立され、彼らは、1848年に制定された「ケンブリッジルール」を元に、FA式のルールを制定した。
これが「サッカー」の誕生で、もう一方は「ラグビー」と銘打ち、別の球技として進化していくことになる。早大や東大のサッカー部が「ア式(アソシエーション式)蹴球部」と称しているのはこの名残だ。