このルール改正がきっかけに、GKも足元の技術が重要になり、ビルドアップ戦術が確立した。ボール扱いの下手なGKが徐々に淘汰された一方、ロングフィードが得意なGKは重宝され、試合のテンポも向上し、サッカーそのものの発展に繋がった。
副産物として、自軍ゴール前からドリブルを開始し攻め上がっていく元コロンビア代表のレネ・イギータ(2010年引退)や、フリーキックで得点を重ねる元パラグアイ代表ホセ・ルイス・チラベルト(2004年引退)のようなキック自慢のGKも誕生した。
GKチラベルトは、アルゼンチンのベレス・サルスフィエルド所属時代(1991-2000)、1994年のリベルタドーレス杯を制し、同年、国立競技場で行われたトヨタカップではACミラン(イタリア)を2-0で完封し、チームを世界一に導いている。

ゴールライン・テクノロジー(GLT/2012年導入)ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR/2018年導入)
現在進行形でサッカーを根底から変えようとしているものが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定の採用だ。そしてその前段として採用されたのがGLT(ゴールライン・テクノロジー)と言ってもいいだろう。
シュートがゴールラインを超えたかどうかをカメラで判定するGLTが採用されたきっかけは、2010年W杯南アフリカ大会決勝トーナメント1回戦、ドイツ代表対イングランド代表で起きたMFフランク・ランパードの幻のゴールだった。
イングランドの1点ビハインドで迎えた前半38分、ランパードが放った力強いミドルシュートはクロスバーに当たりゴールラインを越えたように見えたが、バックスピンが掛かり、フィールド側に戻ってきたボールをドイツ代表GKマヌエル・ノイアーがキャッチ。レフェリーは得点を認めず、この“誤審”によって集中力を失ったイングランド代表イレブンは失点を重ね、1-4で惨敗した。