以下に、従来のグローバル経済と「高関税」が常態化した場合の違いを簡単に整理してみよう。
このように世界がブロック化すると、かつての1930年代のブロック経済や冷戦期の東西分断を彷彿とさせる状況になります。
高関税による取引制限は、グローバルな成長を大きく抑制します。
国際通貨基金(IMF)は、経済の分断が深刻化すれば世界全体のGDPが最大で7%も減少し、技術面のデカップリング(分断)まで進めば特定国では8〜12%もの損失が生じる可能性があると試算しています。
これはリーマンショック級の危機にも匹敵するインパクトであり、長期的な低成長時代が現実味を帯びます。
また、貿易の分断は物価の上昇を招き、特に低所得層の消費者に負担が及ぶと指摘されています。
企業活動の面でも、「高関税のニューノーマル」はサプライチェーン(供給網)の大幅な再編を迫ります。
多くのメーカーは関税負担を避けるため、生産拠点をより関税の低い地域へ移す動きを見せるでしょう。
実際、米国への回帰(リショアリング)はコスト増で現実的でないとの見方が強く、ある調査では供給網を米国に戻すとコストが最大2倍になるため、企業はむしろ関税の安い国へ「玉突き移転」していくと予想されています。
例えば中国での生産を東南アジアやインドにシフトしたり、米国向け製品はメキシコ経由で調達するといった迂回戦略が考えられます。
その結果、世界の供給網は地域ごとに二重化・三重化し、効率よりもリスク分散が優先される構造に変化していきます。
さらに地政学的な緊張も相まって、先端技術やエネルギー資源をめぐるブロック間競争が激化するでしょう。
米中両陣営はそれぞれ国内や同盟国内で半導体から電気自動車用電池まで重要産業を囲い込み、相手国への輸出規制や投資禁止措置を講じるといった経済的な「鉄のカーテン」を下ろすかもしれません。
その一方で、ブロックに属さない第三国が漁夫の利を得る可能性もあります。