人間でいう“アハ体験”のように、AIも突破口を見出した瞬間に急激な性能アップを遂げるのです。

これはまるで、AIが自分なりに新しい物理的発想やトリックを「発明」しているかのようにも映ります。

このように多彩な新デザインが生まれたことは、重力波研究にとって大きな可能性を示すと同時に、「では本当にどうやってそんなアイデアに到達したのか?」を人間が理解するという新たな課題も浮かび上がらせています。

とはいえ、まずは検出器として優れた感度を示すアイデアが確かに見つかったという事実が重要です。

今後、研究者たちはこれらを詳細に分析し、“作れそうなもの”から順番に小規模な実験で試し、実現性やコスト面を検討していく予定とされています。

結果次第では、私たちがまだ想像したことのない形で、重力波の観測能力が一気に進化するかもしれません。

AIが設計図した人類未解読の重力波レシピ

AIが設計図した人類未解読の重力波レシピ
AIが設計図した人類未解読の重力波レシピ / Credit:clip studio . 川勝康弘

今回の成果は、AIが人間の専門家を凌駕するような新発想を生み出しうることを示しました。

それは同時に、人間がそれを理解し解釈するという新たな課題も生まれたことを意味します。

クレーン博士は「我々は今、機械が人間以上の解決策を発見し、人間がそれを理解するのが仕事となる時代に入っています。これは今後の科学において非常に顕著な役割を果たすようになるでしょう」と述べています。

まさに、人間とAIの協働によって科学を進歩させていく新時代が到来しつつあると言えるでしょう。

重力波検出器に限らず、AIによる実験設計は今後様々な分野で応用が期待されています。

研究チームは「今回の手法は他の基礎物理実験の設計にも容易に拡張できる」と述べており、例えば暗黒物質の検出器や重力の量子効果を探る実験などへの応用も視野に入れているようです。

宇宙最大の天体イベントから極微の量子現象まで、AIが最適な“観測の目”を設計し、人類がそれを使って未知の現象を解き明かすーーそんな未来が現実味を帯びてきました。