たとえば「スクイーズド光」という特殊な光の使い方で量子ノイズを抑えるテクニックなどが典型例で、これはAIの回答が既存のノウハウと一致したという意味で、AIの信頼性や妥当性を裏付ける結果にもなりました。

一方で、まったく予想外の奇抜なトポロジー(光学素子の配置の仕方)もいくつも見つかりました。

中でも特筆されるのが、「L字型の干渉計を2台のレーザーで左右から同時に照射(ポンプ)する」というアイデアです。

通常のLIGO型では1つの強力なレーザーを用い、ビームスプリッターで分けて2本の腕に光を送り込みますが、AIの設計では2台のレーザーを別々に使って同等のパワーを確保しつつ、複雑な干渉効果を狙うという発想が採用されていました。

一見すると手間やコストが増えそうに思えますが、実はレーザー1台あたりの出力を抑えられる分、かえって鏡や光学系への負担を軽減できる可能性があるなど、意外なメリットも見えてきたのです。

興味深いのは、これらの「AI発見のトリック」は設計図としては人間が読めるものの、なぜそれがこんなにうまく働くのかを“教科書レベルの物理理論”に訳しきれていないという点です。

具体的には、「どの光をどう経路変更するとノイズが下がり、なぜこれほど信号が増幅されるのか?」は設計図を見れば一応わかるものの、それを人間の言葉で完璧に説明できない領域がまだ残っているのです。

研究者たちは「動作原理を理解しきるためには、さらに詳しく分解し、解析する必要がある」と述べており、この“解読作業”が今後の大きな課題の一つになっています。

なお、ユラニアがどんなふうに「ひらめき」を起こしているのかを遡ってみると、その性能向上のプロセスは必ずしもスムーズな右肩上がりではなかったといいます。

長い間ほとんど改善がない“停滞期間”があったかと思えば、ある瞬間にパラメータの組み合わせが見事にハマり、「ガツン」と感度が跳ね上がる場面が何度か観測されました。