次に、AIやオンライン百科事典などへ流れ込む二次情報をフィルタリングし、誤引用が延々と繰り返されるループを断ち切る仕組みづくりが急務です。
そして最後に、海外の読者に向けてあらためて公式翻訳を用意し、戦国期と江戸期の言語差を注釈つきで示す作業も、非常に大きな前進となるはずです。
結局のところ、弥助は確かに信長の前に現れた“黒坊主”であったことは事実と考えられますが、きらびやかな武士道の鎧をまとわせたのは、江戸時代の人々と現代メディアのイマジネーションにほかなりません。
史料という原画に立ち返ってみると、弥助は“力自慢の来訪者”としての素朴な姿が浮かび上がります。
そのイメージをどう受け止め、どこまで物語として広げていくのか――これは今後、私たち読者やクリエイターに委ねられた新たな課題と言えるでしょう。
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元論文
Manuscript Discrepancies and Historical Ambiguities: A Textual Study of the Shinchōkōki and Yasuke 写本の相違と歴史的曖昧さ:『信長公記』と弥助に関する本文研究
https://www.jiesuwon.com/jieissue7volume1-2025-1-22-jie-journal
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部