いずれ、この見せかけの小康状態が金融市場の中で波乱を迎えるか、大統領による株価操縦として司法の判断を仰ぐことになるか、どちらにしても平穏無事では済まないでしょう。

資本逃避に関する教科書的説明には、以下の6段階で資本は特定の国から逃避すると書かれています。

1.経常赤字の拡大

2.世界各国中央銀行の外貨準備に占める自国通貨シェアの下落

3.通貨価値の毀損(=インフレ)

4.国家総債務と利払い負担の増加

5.資本の他国への逃避

そして、当該国家がデフォールト宣言を選ぶか、ハイパーインフレを選ぶかの最終段階である

6.金利上昇

現在のアメリカ経済はすべての条件を満たしています。よく「基軸通貨としての米ドルの地位は揺るがない」という反論を見かけます。ですが、外貨準備に占める米ドルの地位は着実に低下しつづけています。

従来から、それぞれ独自の理由で米ドル準備を控えめにしていたスイスとロシアを除いた外貨準備の中では米ドルのシェアは約63%とかなり高めです。しかし、この2ヵ国を含むデータでは、はっきり60%台を割りこんでいます。

下段で見る米ドル指数の下落は、外貨準備に占める米ドルのシェアを下げようとしている国がアメリカの有力貿易相手国の中にも存在することを示唆しています。

なお、米ドル指数とは、アメリカの有力な貿易相手国のアメリカとの貿易総額で加重平均した通貨ユニットで測ると1米ドルがいくらになるかを示しています。

次の2段組グラフをご覧下さい。

上段はトランプ関税政策の失態が、米ドル指数をかなり押し下げたことを示しています。そして、下段は1985年には160台に上がっていたこの指数が、次のハイテクバブルの天井では130前後にとどまり、20世紀最後の15年間でアメリカの国力がそうとう落ちた印象があります。

今回最後のグラフは、第2次トランプ政権発足から「解放の日」直後までのアメリカ金融市場3大指標の推移を示しています。