もちろん、実際には自社製品をほぼ全部中国で造らせているアップルなどから強烈な突き上げと、従来以上の高額ロビイング献金の約束などがあったのでしょう。とは言え、ここまで露骨に株の売買についてインサイダー情報を流した大統領はトランプが初めてでしょう。

待てど暮らせど最愛の人からの電話は来ず

しかし、問題は上の表で箇条書きした項目のうちの4、トランプが期待していた中国からの「税率を下げてくれ」というような交渉の電話がまったくなく、それどころか中国は「アメリカ以上に高率の関税をかけて反撃する」と主張していることでしょう。

孤独な独裁者の悲哀と言うより、ティーンエイジャーの女の子がみんなの憧れの的になっているボーイフレンドからの電話を待っているような、幼稚な強がりがよく出た風刺写真の傑作だと思います。

そもそも「アメリカが懲罰的な高率関税をかければ、中国は降参して税率を下げてくれとお願いしてくるはずだ」という発想自体が時代錯誤であり、事実無根なのです。まず製造業に限定した中国の「対米依存度」から見ていきましょう。

いちばん「対米依存度」が高いその他製造業(ここにはオモチャや雑貨などが入ります)でも25%で、ほとんどのサブセクターでは10%台半ばとなっています。全製造業で見た対米依存度も14.8%で「アメリカに輸出できなければ食っていけない」ほどではありません。

そもそも依存度という用語が見当違いで、どこの国へでも売れれば輸出するし、適度な利益を見こんだ金額では売れない国にもなんとか工夫して無理やり輸出しなければ産業として成立しないといった事情もありません。

まあ、中国の場合、中国共産党首脳部が将来の有望産業と見込んでいるEVやソーラー発電装置では、世界各国に安値輸出をしながらシェアの確保を図っている傾向はありますが、製造業全体がそういう方針でやっていけるわけがないのです。

全産業ベースで、アメリカにとっての中国への輸出額と中国からの輸入額を比べたグラフに移りましょう。