制度の概要: スウェーデンは1990年代後半に抜本的年金改革を行い、賦課方式の公的年金にNonfinancial Defined Contribution(NDC:概念上の拠出建て)制度を導入しました。これは従来の賦課方式を個人ごとの仮想勘定に基づく積立方式に見立てたもので、現役期の拠出額を記録しそれに賃金変動率で利息を付けながら積み立て、退職時には平均余命に応じて年金額を算定する仕組みです。いわば賦課方式の確定拠出年金とも言える制度で、各世代の拠出と給付の対応が明確になるため世代間の不公平感を小さくし、就労インセンティブも高める効果があります。またNDC部分の給付水準は経済状況や人口動態に応じて自動調整(自動安定化メカニズム)されます。実際、2008年のリーマンショック後にNDCのバランス比率が1を下回ったため2010~2017年にかけて年金額の自動調整(カット)が発動され、制度財政の長期均衡が図られました​nensoken.or.jp​nensoken.or.jp。この自動安定化装置により、政権が都度給付削減を決断しなくても財政悪化時には年金が減額調整される仕組みが確立されています。NDC改革に合わせて、全拠出のうち2.5%分は完全積立方式の個人勘定(FDC)に振り替えられ、国が運営するプレミアム年金として各加入者が自行選択したファンドで運用されます​nensoken.or.jp。残る16%分の拠出はNDCとして賦課方式で高齢世代の給付に充てつつ記録されます​nensoken.or.jp。このように部分的に積立を導入したのは将来の積立金収益を取り入れ財政に余裕を持たせる狙いもあります。もっともNDC導入時には積立への転換による財源不足を補うため、公的年金の積立金(AP基金)を活用して移行コストを賄っています。さらに低所得高齢者には税財源による保証年金(全国民を対象とした最低年金)が支給されます​nensoken.or.jp。保証年金は居住年数要件(40年在住で満額)に基づき無年金・低年金者に給付され、財源は一般税収で100%賄われています​nensoken.or.jp。この保証年金により所得再分配機能を税方式部分に集約し、NDC部分自体は拠出と給付の対応を厳格にすることで制度の公平性・保険料の納得感を高めています​nensoken.or.jp。スウェーデンの公的年金は以上のようにNDC(賦課)+FDC(積立)+税方式最低保障という三層構造を取り、財政の自動安定化と最低保障を両立させている点が特徴です。