制度の特徴と脱政治化の仕組み: 改革後のイギリス年金制度は、公的年金部分をフラットな税財源型給付+高齢者扶助に整理し、それを土台に個人の私的年金蓄蓄を促す「自己責任型モデル」に転換しました。公的年金給付水準は平均的収入に対し3割強と比較的低く抑えられていますが(それでも改革前よりは改善)、その分、公的年金の対GDP支出は将来も8%未満で安定すると見込まれています​tr.mufg.jp​tr.mufg.jp。これは若年層の負担を抑えつつ高齢者貧困を防ぐバランスを狙ったものです。最低所得層には引き続き年金クレジット(所得テスト付きの給付)が用意されますが、新国家年金の水準引上げにより将来的にこの補足給付へ依存する高齢者は減少する見込みです​dl.ndl.go.jp。一方、中〜高所得層は職場年金や個人年金による自助努力で老後生活水準を維持することが政策的に期待されています。そのための環境整備として政府系の低コスト年金基金NESTの設立や手数料上限規制なども導入されました。制度の脱政治化という点では、改革プロセスで年金委員会(ターナー委員会)のような独立機関が長期的視点から提言を行い政権交代を超えて実行に移されたこと、また年金支給開始年齢の段階的引上げを法律に盛り込み将来の調整を制度化したことが挙げられます。例えば支給開始年齢は2028年までに67歳へ、さらにその後も寿命に応じて段階引上げを検討する枠組みとなっており​nensoken.or.jp、これにより給付水準引上げ(賃金連動化)とのセットで財政中立を図っています​nicmr.com(※現在は政権公約として“トリプルロック”による年金額維持が掲げられていますが、これも超党派で見直し議論が進んでいます)。総じてイギリスは、公的年金を老後所得のナショナルミニマムに限定しつつ制度全体をシンプルに再設計し、「公的な最低保障+私的蓄蓄」による年金モデルを確立しました​tr.mufg.jp。これは本提言の改革案2(厚生年金廃止案)の有力な参考事例となります。

スウェーデン:自動安定化機能による持続可能な社会保険モデル