そして、その“信用の上に組み立てられた金融商品”の中でも、もっとも象徴的な存在が、2000年代のアメリカで登場した「MBS(住宅ローン担保証券)」です。

ここまでの話を聞いて、個人の借金と金融資産を同列に語るのは極端すぎると感じた人もいるかもしれません。

しかしMBSは、まさに個人の借金(住宅ローン)を束ねて金融資産にしたものであり、2008年のリーマンショックに直結する極めて重大な金融商品となりました。

個人の借金を金融資産にしてしまった「MBS」の登場

2000年代初頭のアメリカでは、住宅の購入ブームが起きていました。

アメリカでは古くから「マイホームの所有はアメリカン・ドリームの象徴」とされてきましたが、2000年代初頭には、それが国家政策レベルで奨励されたのです。

特にブッシュ政権(2001年〜)下では、低所得者層にも住宅所有を広げることが「国民全体の繁栄」につながるとされ、住宅ローンの規制を緩和する政策が進められました。

そのため多くの人がマイホームを手に入れ、銀行もそれを支える形で住宅ローンをどんどん貸し出したのです。

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しかし、銀行にも限界があります。資金が足りなくなってくると、さらに貸し出すには資金の「回収」が必要になります。そこで銀行が考えたのが、「住宅ローンをまとめてパックにして、商品として投資家に売ってしまおう」というアイデアでした。

たとえば、あなたが友達3人にお金を貸したとします。Aくんには1000円、Bさんには2000円、Cくんには1500円。返済の時期はバラバラです。でも、それを一つのパックにまとめて、「この返済スケジュールを全部受け取る権利」として別の人に売ったらどうでしょう?

その人は返済を利子もつけて受け取れるし、あなたも一部の利息と共にすぐに現金を手にできます。

これがMBSの基本的な仕組みです。実際にはもっと高額の数百~数千の住宅ローンがまとめられ、それをまた細かく分割して世界中の投資家に売られました。