つまり、「この住宅ローンは、毎月きちんと返済されています。その返済を受け取る権利を、投資家のみなさんに売りますよ」という商品がMBS(Mortgage Backed Securities)なのです。
なぜ、そんな商品が人気だったのか?
理由はシンプルです。投資家から見れば、「住宅ローンは毎月コツコツ返済されるから、安全に見える」のです。
しかも、アメリカでは住宅価格が右肩上がりに上昇していたため、「返済できなくても、家を売れば大丈夫」という楽観的な雰囲気が市場全体を包んでいたのです。
ここから、いわゆる「住宅バブル」が生まれていくのです。
住宅を買いたい人が増えれば、その需要の高まりから住宅価格が上がります。価格が上がれば、「今のうちに買っておこう」とさらに人が家を買いに走ります。すると、また値段が上がる――この繰り返しです。
2000年代前半のアメリカでは、この住宅バブルによって、どんなやつでもいいからどんどんローンを組ませて「家を売りまくれ」という雰囲気が金融の世界に広まっていきます。
この需要の高まりから登場するのが、サブプライムローンという非常に危険なローンです。
「プライム」とは信用度の高い優良層を指します。「サブ」はその下の信用度が低い層という意味です。つまり「サブプライム」とは、収入が不安定、返済能力が低めな人を指します。
もう言葉の意味を説明しただけでヤバい予感がします。
銀行は、最初は信用のある人(プライム層)にローンを出していましたが、そのうち信用の低い人(サブプライム層)にも貸し始めました。返せるかどうかよりも、「とにかく貸してMBSにして売ればいい」という考えが、金融機関を突き動かしていたのです。
とはいえ素人目に見ても返済能力のない人にお金を貸してどうするんだ? という気がしてしまいます。実際こんなことが成立した背景には、当時のアメリカの異常な住宅価格の上昇率があります。買ったときより高く売れるという状況が当たり前になっていたのです。