その意見はもっともです。
ただそれができるのは銀行がありとあらゆる人たちから大量にお金を借りているからです。それこそ総合すれば何兆円という額になります。そこであなたが100万円返してと言っても痛くも痒くもありません。
しかし、日本中の人が一斉に預金を引き落とそうとしたら話は別です。そうなったとき銀行は友達と同じでお金を返すことはできなくなります。
銀行は預金されたお金の一部を企業や個人への貸付に回して運用しています。だからこそ、預金には利息がつきます。しかしこの仕組みは、預金者全員が同時に「返して」と言わないことを前提に成立しています。
もしも全国の人々が一斉に預金を引き出そうとしたら、銀行は資金が足りず、返済できなくなってしまうのです。これが、かつて実際に起きた「取り付け騒ぎ(バンクラン)」という現象です。

とはいえ、実際には銀行が一瞬で信用を失うことはまれです。だからこそ現代の金融システムは成り立っているのですが、それでも何かのきっかけで信用が崩れた場合、金融資産の“価値”は一気に揺らぐことになります。
資産の価値とは、「それが将来お金を生む」という信用に基づく期待値です。その信用が崩れると、「資産だったはずのもの」が、突如として大幅な価格下落(または実質無価値)に陥ることもあります。
それが、いわゆる「バブル崩壊」の本質です。
もちろん、資産のすべてが「借金」で成り立っているわけではありません。株式や不動産などは、厳密には「誰かの負債」とは限りません。しかし、株価もまた「将来の利益を見込んで評価された期待値」であり、期待と信用の塊という点では同じです。
金融の世界では、この「期待値に値段がつく」という性質ゆえに、信用が一度揺らげば資産価格が一気に崩れるというリスクを常に抱えています。