論文ではこのような図で、宇宙の膨張を粒子の“外向きの流れ”としてモデル化しており、その流れにわずかな回転を加えることで観測と整合する拡がり方になると説明しています。
宇宙が回ると時間も回るという疑問
宇宙が回転していると聞いて、多くの物理学者が真っ先に懸念するのが、「閉じた時間的ループ(Closed Time-like Curve, CTC)」の問題です。
私たちは「宇宙が回ると言われる」と、球体のようなものが回っている様子をイメージしてしまいがちですが、宇宙とは何らかの空間に浮かぶ物体ではなく、それ自体が時空(時間と空間)で構成された構造体です。
このような構造が回転した場合、時間まで回転するという解釈が生まれてくるのです。
そのため宇宙が回転していると、時空の構造がねじれ、ある特定の経路を通って未来から過去に戻るような“閉じた時間的ループ(CTC)”が生じる可能性があるのです。
これは理論的には“タイムトラベル”と同等の現象を意味し、因果律(原因と結果の順序)を破る深刻な問題となります。
こうした懸念に対処するため、今回のモデルでは、回転の強さを光速以下に抑えることで、こうしたループが発生しないように設計されています。
具体的には、宇宙の観測可能な地平面の内部で、どの点においても物体の運動が光速未満にとどまるよう、回転の強さ(ω₀)を制限しているのです。これにより、因果律(原因が結果に先立つというルール)を破るような構造にはなりません。
宇宙は静かに回っているのかもしれない

「宇宙全体がゆっくりと回っている」というアイデアは、にわかには信じがたいかもしれません。
しかし、今まで説明できなかった“観測のズレ”を自然に解消できるとすれば、私たちの宇宙観を塗り替える発見になる可能性があります。