なお、フラテナル・バース・オーダー効果に関しては、Ablaza らの手法では有意な結果が得られなかったものの、Khovanova の手法ではゲイ男性においてのみ有意に確認されるなど、分析方法の違いによるばらつきも見られました。

結果として最も注目を集めたのは、“男性の無性愛者”に関するデータでした。

調べてみると、兄弟姉妹の総数が多い男性ほど「無性愛である可能性が高まる」という傾向がはっきりと浮かび上がったのです。

たとえば、兄が多いか姉が多いかにかかわらず、とにかく家族の人数が多い男性は、無性愛を自認する割合が高いというわけです。

一方、女性の場合は、「姉が少ない」「一人っ子である」といった条件が、無性愛である傾向と関連していたという興味深い結果が得られました。

また、バイセクシュアルの男性では兄弟姉妹の総数が多いほどその傾向が高まったり、バイセクシュアルの女性では姉が少ないほどその可能性が上がるなど、指向ごとに異なるパターンも見られました。

既存の研究でしばしば話題になる“フラテナル・バース・オーダー効果”や“ソロラル・バース・オーダー効果”に新たな視点を加える形になったという意味で、非常に興味深い結果といえるでしょう。

なぜこの研究が革新的といえるのか?

最大の理由は、まだまだ手探りだった「無性愛と家族構成の関係」を、ここまで大規模かつ精密なアプローチで取り上げた点にあります。

これまでは、たとえば男性同性愛と兄の数の関連が盛んに議論されてきた一方で、無性愛にまで踏み込んだ研究は非常に限られていました。

しかも、今回の研究では同じ人々を「無性愛」「同性愛」「両性愛」「異性愛」に分け、さらにその兄弟姉妹構成を徹底して分析しているため、さまざまな性的指向を横並びで比較できるデザインになっているのです。

こうした包括的な視点は、性的指向に関する研究ではまだ珍しく、得られたデータが今後の議論や追加調査に役立つことが期待されています。