近年、性的指向の多様性がますます注目される中で、いまだに詳しい研究が少ないものの一つとして「無性愛(アセクシュアル)」があります。
恋愛感情は抱いても性的欲求を感じない、あるいはそもそも性的魅力をほとんど感じない人々の存在は、社会的には認識されつつあるものの、その成り立ちはまだ不明な点が多いのです。
カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)で行われた研究によって、兄弟姉妹の数が多い男性ほど無性愛である確率が高く、女性では姉が少ない、あるいは一人っ子ほどその傾向が強いかもしれないという意外な結果が示されました。
これまで同性間の恋愛指向と「兄の数」などが関連することは知られていましたが、まさか無性愛にも家族構成が影響する可能性があるとしたら、いったい私たちの性的指向はどのように形づくられているのでしょうか?
研究内容の詳細は『Archives of Sexual Behavior』にて発表されました。
目次
- 無性愛の出現を家族構成という新たな切り口で見る
- 無性愛はどうやって生まれるのか?
- 無性愛が生まれる仕組みを解き明かす
無性愛の出現を家族構成という新たな切り口で見る

無性愛(アセクシュアル)とは、一般的に「性的欲求を感じない、あるいはほとんど感じない」という状態を指し、近年になってようやく認知度が高まってきた性のあり方の一つです。
(※LGBTQIAの「A」は基本的にこの無性愛者(アセクシュアル:Asexual)を表しており、性的指向のひとつとして認識されています。)
たとえば、恋愛関係を望むことはあっても、その延長としての性的な親密行為に魅力を感じない人もいれば、そもそも他者を性的対象として見ること自体がほとんどない人も存在します。
しかし、無性愛という性的指向がどのように形成されるのかについては、まだ定説があるわけではありません。