中国政府は左派政権のスペインを切り口にEUにトランプ関税への対抗における協力を呼び掛けた。同じようにオーストラリアにも協力を呼び掛けたが、豪州政府はこれを全力で拒否し、「世界で起きているいかなる争いについても、中国と手を取り合うつもりはない」とまで言い切った。中国政府も過去に散々政治的な理由で豪州産の石炭や牛肉を輸入禁止してきたのに、今更協力して米国と対抗しろなどあまりにも虫がよすぎるのである。韓国もすかさずトランプ政権に忠誠をアピールした。
中国による反米合従に機会を与える可能性に気付いたのか、トランプ政権も広げすぎた風呂敷を早速畳み始めた。
米国は4/9に中国に対する関税率を125%に引き上げると同時に、中国以外の国々に対しては「報復しなかった報奨」として10%を超える分の上乗せ関税発動の90日間延期を発表した。中国と中国以外を切り離す連衡である。
中国はそれに対し報復関税を125%まで引き上げ、「現在の関税率では米製品はもはや中国で売り物にならない。米国に輸出される中国製品に米国が関税を賦課し続けるとしても、中国側は取り合わない」と報復ループの打ち止めを宣言した。確かにある程度まで関税が上がると貿易額が減るため、それ以上レートを上げてもマージナルな影響は薄くなっていく。
中国経済に対して輸出品への関税は言うまでもなく大打撃である。既に米国企業は中国でのPC等の米国向け生産を止める動きを見せており、これが長期化すれば直ちに人員削減ラッシュに繋がる。
しかし輸入品に限って言うと米国からしか買えない、或いは買えないと困るようなハイテク製品はことごとく既に輸出禁止になっているため、関税を引き上げたところで輸入面で困ることは少ない。民意や短期的な株価変動を気にする必要がないのも中国政府の強みとなる。
それに引き換え、金融市場の混乱の中で米国債金利が大幅に上昇したことがトランプの譲歩に繋がったとも言われている。