トランプは「我が国の二国間貿易関係における互恵性の欠如、関税率や非関税障壁の不均衡、そして米国の貿易相手国による国内賃金や消費を抑制する経済政策といった根本的な状況が、毎年の大きく持続的な米国の財貿易赤字が示すように、アメリカ合衆国の国家安全保障および経済に対する異常かつ非凡な脅威を構成していると認定する。この脅威の原因は、全体的または大部分において、アメリカ国外に存在し、主要な貿易相手国の国内経済政策や、国際貿易体制における構造的不均衡に由来している。よってこの脅威に関して国家非常事態を宣言する」と全世界に対して国家非常事態を宣言している。
IEEPAは国家非常事態の宣言を条件に、その脅威に対処するための経済的措置を行う権限を大統領に付与しており、「経済的措置」の中に関税が含まれるというのがトランプ政権の解釈である。
1962年通商拡大法第232条や1974年通商法第301条に基づく関税引上げは数ヶ月の調査を必要とするので、4/2に間に合うのか?とモヤモヤしていたのも、悪い意味で答え合わせになったということになる。USMCAは生きているため、カナダとメキシコは今回の相互関税の対象国から外されている。
本ブログも以前の記事で前USTR代表のライトハイザーが「米国の貿易赤字とその米国経済への影響の巨大さが脅威である」との理屈を示していたことを認識はしていたが、さすがにトランプ政権が真顔で世界中に対して国家非常事態を宣言すると想像できなかったのは予習不足であった。
現実として国家緊急事態宣言は容易に濫発できるものであり、平均して毎年1.5個のIEEPAが発動されているし、第一次トランプ政権だけで11個も行われている。IEEPAは国家非常事態宣言に対し、国家緊急事態法(NEA, National Emergencies Act)に基づき6ヶ月ごとに議会への報告義務、そして1年ごとに継続の必要性を議会に通知する義務を課しているが、この報告は形骸化しており、1976年のNEA制定から2023年に至るまで、議会がIEEPAに基づく非常事態を終了させたことはない。