先進国同士の関税率などたかが知れているし、通貨操縦や貿易障壁を定量化できるはずもなく、人々は予想以上に高い根拠不明な相互関税率に混乱した。
数時間のうちに、人々は10%を超える国々の相互関税率が「米国の貿易赤字 / 米国の輸入額の1/2」で説明できることに気付いた。
現に関税率リストでUSセンサスの2024年貿易データと相互関税率をプロットすると、見事に一直線になる。左端の外れ値は貿易額が小さすぎて四捨五入の影響が大きくなったもので、他に微妙に乖離しているのは単純に割り算を間違えたのだろう。日本(貿易赤字 / 米国の輸入額が46%、相互関税率24%)もそのうちに入る。
USTRは相互関税の数字が「米国の貿易赤字額 / 米国の輸入額」に比例することを認めたが、εだのφだのとグリークを駆使して本当はもう少しもっともらしい計算だったと解説している。その弾性値を適当に代入したのが明らかであるためまた嘲笑を呼んだ。
数日後に「関税に対する輸入価格の弾性値」が間違っているとの指摘も入ったが、だからと言って相互関税率が修正されるはずがない。真面目に取り合う時点で負けなのである。何よりも、USTRがここで「均衡関税率」を算出したとしても、トランプはこの数字を「通貨操縦や貿易障壁も含む米国への他国の関税率」として公表しているのであって、噛み合っていないというか欺瞞であるとしか言いようがない。
USセンサスは様々な海外領土を本国と別に列挙しているようで、ペンギンしか住んでいない無人島であるオーストラリア領ハード島とマクドナルド諸島にも10%の関税が課せられたことは失笑を呼んだ。相互関税に対する懸念の少なくとも一部は、米国の意思決定機関の知能に対するものであった。
ああ、IEEPA
大統領がこれほどまでに大規模な相互関税を決定できる根拠は何か。ホワイトハウスの発表によるとやはり国際緊急経済権限法(IEEPA)である。