バスティアは、自身の有名なエッセイ「見えるものと見えないもの」の中で、「経済的な決定は、目に見える直接的な効果と、目に見えない長期的な効果の両方を生み出す」と主張しました。
政策立案者はしばしば、政策の直接的な利益である「目に見えるもの」に焦点を当て、手遅れになるまで隠れたままの連鎖的な悪い影響を考慮しない傾向があります。
関税に関して言えば、目に見える効果は理解しやすいでしょう。
外国製品の価格が上がることで、消費者は国内製品を買うようになり、それによって国内産業と雇用が守られます。
しかし、ここで「目に見えないもの」は何でしょうか?
それは、生産性、生産構造、貿易関係、そして経済成長に対する、より広範で長期的な影響です。
目に見えるもの:国内産業の一時的な保護
関税が課されると、当初は国内の生産者が利益を得ます。輸入品をより高価にすることで、関税は短期的には国内産業に競争上の優位性をもたらすのです。
政治家は、関税が雇用を保護し、国内生産を促進する効果がある証拠として、この利点を強調します。しかし、この一時的な保護には大きなコストがかかります。
目に見えないもの:経済への長期的なダメージ
- 消費者と企業にとってのコスト上昇
関税は消費者に対する税金として機能し、消費者は輸入品やその国内代替品に対して、より高い価格を支払わざるを得なくなります。その結果としての家計への累積的な影響と、経済の他の分野での支出の減少は、目に見えません。
また、材料や部品を輸入に依存している企業は、コストの上昇に直面し、国内外での競争力が低下します。
- サプライチェーンの混乱
現代の生産工程、特に自動車や製造業などの産業では、国境を越えた複雑なサプライチェーンが存在します。
たとえば、1台の自動車は生産される間に米国とカナダの国境を何回も通過することがあります。各通過地点で関税が課されると、コストは急速に上昇し、最終製品の価格が上昇し、競争力が低下します。目に見えない影響として、関税のないスムーズなサプライチェーンに依存する産業全体に、連鎖的な混乱が生じます。
- 報復と貿易戦争