ここに海外と比較しても、日本のトランスジェンダリズムに顕著な特徴がある。彼ら彼女らは「差別と戦う」と自称しつつ、強い者には逆らわない。すでに炎上して脛に傷のある学者や、SNSでの評判が命綱である個人の書店といった、殴り返してこなそうな相手だけを狙って、数の力でワンサイド・ゲームを仕掛けるのだ。

まさしく日本のTwitterでTRAが急増したのが、2020年以降の新型コロナウイルス禍の下だったがゆえの、必然である。自粛とステイホームの退屈を、「必ず勝てる」SNSでのネットリンチで晴らしたい。その便利な口実に使われたのが、「海外ではそれは差別なんです」として(嘘で)広められたトランスジェンダリズムだったわけだ。

とはいえ、そんな手法が「必勝」なのはSNSの上だけだ。いわゆるエコーチェンバー(=同じ意見だけが響く部屋)を一歩でも出れば、現実が広がっている。日本でのTRAの凋落は、まもなくそうした形で起こった。

元参院議員でオープンリー・ゲイの松浦大悟氏の、以下の記事が載ったのは翌23年の4月。女優の橋本愛氏によるごく常識的な発言が「トランス差別だ」として、J. K. ローリングのように炎上させられた顛末を扱っている。

要は狭い業界での「ヤクザの喧嘩」だったから、TRAのやり放題が見過ごされてきたのを、カタギの著名人に手を出したわけだ。なお橋本氏は25年現在、主演作をフェミニズムの観点からPRに努めるくらい、男女平等の推進にも熱心な人だ。それを叩いて「遊んで」いたのだから、相当である。