これこそが「壊れても何度でも形状を取り戻す液体」の正体といえます。

つまり、「界面張力が高いのに、壊れても復元される」というのが、まるで“熱力学からはみ出した”かのように見えながら、実は“磁力”を含めたエネルギーバランスが完璧に保たれているのです。

したがって、今回の研究は、熱力学を完全に無視しているわけではなく、「油と水の境界面+磁性粒子の強い結合」という組み合わせによって、教科書的な常識を超えた状態がいくらでも作り出せる可能性を示しています。 

いわば「既存の熱力学モデル」に“強い磁気相互作用”という新しい変数を加えたら、まったく予想外の安定な構造を生み出せることがわかったのです。

これほど強力な磁気相互作用をうまく取り入れた例はほとんどなく、まさに「熱力学の教科書の外側にある世界」をひとつ切り開いたとも言えるのではないでしょうか。

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参考文献

UMass Amherst Team Finds Exception to Laws of Thermodynamics
https://www.umass.edu/news/article/umass-amherst-team-finds-exception-laws-thermodynamics

元論文

Shape-recovering liquids
https://doi.org/10.1038/s41567-025-02865-1

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部