手を取り合いながらも、それぞれにこだわりが強くて配置には神経質。
結果として、油と水の接触面だけを見るなら「表面を縮めるはず」ですが、磁性粒子どうしがぴたりとくっつくことで、まるで“もう一枚上から膜を敷いた”ような状況になり、その膜が界面張力を高いレベルで安定化させてしまうのです。
つまり、油と水の境界面が大きくなればなるほど、本来はエネルギー面で不利になりそうなのに、粒子どうしの強い結合による別のエネルギー(いわば“磁気的なアドバンテージ”)が、最終的に自由エネルギーを下げる方向に働いています。
そのため、表面的には“粒子が界面を覆うと張力が上がる”という現象を引き起こしながら、系全体としてはちゃんと熱力学的に見合った帳尻が合っているのです。
もう少し具体的に言えば、境界面に粒子が増えるほど、普通は「それだけ油と水の接触が減る」ので、界面張力は下がっていくはずです。
ところが磁性粒子には、互いに引き合う強力な“磁石の力”があり、その力で粒子どうしがモザイク状に絡み合いながらネットワークを組み上げる際のエネルギーが、ただ接触面を減らすだけでは説明できない新たな安定化要因になっています。
言い換えると、粒子の数が増えるほど“磁性粒子間の安定化”がより強固になり、油と水が直接触れ合う面は減っているのに、境界としてはむしろ高い張力を保っているという、いわば“ねじれたバランス”に落ち着いているのです。
だからこそ、勢いよく壊してやっても、磁性粒子どうしが再び理想的な並びを形成し直し、元どおりの状態に戻ってしまうというわけです。
ここにこそ、熱力学の法則を破っているように見えて、実は「強磁性相互作用」という余分なエネルギー項を含めた総合的な自由エネルギーがきちんと下がっているので矛盾がない、という真相があります。
さらに今回の磁性粒子の場合は、粒子同士がわずかな隙間を保ちながら強く絡み合う“柔軟で頑丈なネットワーク”を作り、そのおかげで液体同士の境界も自発的に復元するような高い再生能力を示しました。