2:炭素中立の限界 バイオマスが「炭素中立」とされる理論は、木が成長する過程で吸収したCO2が燃焼時に排出されるCO2と相殺されるという前提に基づいています。しかし、ご指摘の通り、木の成長には数十年かかる一方、燃焼は一瞬でCO2を放出します。この時間差により、短中期的な気候変動対策としては効果が疑問視されます。特に、森林伐採が過度に行われると、炭素吸収源としての森林そのものが失われ、逆効果になる場合もあります。
3:有害な補助金との関連 SDGsでは、非効率的で環境に悪影響を及ぼす補助金の削減が求められています(SDG12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する)。バイオマスの個別燃焼を推進する補助金は、クリーンエネルギーへの移行を妨げ、大気汚染や森林破壊を助長するとして「有害」とみなされることがあります。例えば、薪ストーブの普及を奨励する政策が、実際にはより効率的で排出の少ない技術(太陽光やヒートポンプなど)の導入を遅らせる可能性があるのです。
● 次に、「バイオマスがクリーンエネルギーとされるのはおかしい」というご意見について。確かに、バイオマスは再生可能ではありますが、「クリーン」という評価は燃焼方法や管理の仕方に大きく依存します。大規模なバイオマス発電所では、排ガス処理技術を導入して汚染物質を減らす努力がなされていますが、個別燃焼ではそのような対策が難しく、結果として環境負荷が高まります。また、森林破壊が進む場合、生態系への影響も無視できません。この点で、バイオマスの利用が必ずしも「持続可能」とは言えないケースがあるのは事実です。
● 日本政府が薪ストーブを推進する政策についてのご指摘も興味深いです。薪ストーブは、伝統的な暖房手段として、また地域資源の活用という観点から支持されることがあります。しかし、環境政策としてこれを「良いこと」とPRすることには、科学的根拠の不足や大気汚染のリスクが伴います。業界団体の影響があるとすれば、経済的利益が優先され、環境や健康への配慮が後回しにされている可能性も考えられます。これは、政策決定の透明性や科学的検証の必要性を問う重要な視点です。