アラン・グリーンスパン元連邦準備制度理事会(FRB)議長(1987年-2006年)は、当然ですがMMT支持者ではありません。しかし、彼は非常にMMT寄りの主張をしました。「米国はどんな負債でも支払うことができる」。
これは事実であり、名目債務やドルが問題ではないことを指摘していますが、「この操作が生産構造全体に与える歪んだ結果」を見落としています。
それにもかかわらず、このような主張はMMTの支持者によってしばしば繰り返されています。あたかもMMTが、より大きな富の貯蔵庫を解き放つための、なにか魔法の材料でも含んでいるかのようにです。
MMTは、他の経済学者(※オーストリア学派以外)と「根本的な前提」を共有しています。その前提とは、いわゆる「金融政策」です。
つまり、中央銀行の独占を通じて政府が政策手段として貨幣を発行・管理する唯一の主体であるべきだというものです。その理由は「経済の安定性を高め、貿易の必要性に応じて貨幣と信用を拡大するため」です。しかし、理論的にも経験的にも、これらはどちらも誤っています。 とはいえ、MMTも主流派経済学もこの前提を共有しており、金融政策の正当性を前提としています。
金融政策の定義を提示する一例として、人気のある金融百科事典『インベストペディア(Investopedia)』は、以前、次のように記していました。
金融政策とは、中央銀行が、国家の銀行、消費者、企業が利用可能な通貨供給量全体をコントロールすることで、持続可能な経済成長を促進するために利用可能な一連の手段である。・・・ 自由に使える主な『武器』は、国家の資金である。
Investopedia
「武器」という言葉のさりげない使い方は適切です。国家独占の手にかかれば→国家が独占するならば、貨幣は確かに「武器」となりえます。
インフレとは、貨幣と銀行信用を人為的に膨張させることであり、すべての貨幣保有者から、膨張させる側に富を移す効果があります。これは「政策」という言葉を装って行われており、一見して公式で秩序があり合法的であるように思われます。