研究者たちによれば、超放射は多数の分子が協調して光を一斉に放出する現象であり、その放出速度を詳しく調べたところ、量子系の状態変化の最短時間を理論的に示す「マルゴリス=レヴィティン速度限界(Margolus-Levitin theorem)」と比べても、わずか100倍以内の誤差に収まるほどの超高速領域に達する可能性があるとされています。

マルゴリス=レヴィティン速度限界とは?

マルゴリス=レヴィティン速度限界とは量子システムがある状態から全く異なる状態へと変化するのに必要な、理論上の最短時間を示すものです。

この限界は、システムに投入されるエネルギーの大きさによって決まり、いくらエネルギーを増やしても、これ以上速く状態を変えることはできません。

もし細胞内部で、この限界に近い速度で分子やタンパク質が状態を変えて情報処理を行っているならば、それは従来考えられていた「神経のスパイクによる計算」などの方法をはるかに凌駕する、驚異的な高速演算能力を持っていることを意味します。

つまり、細胞が自らの構成要素であるタンパク質の量子効果を最大限に活用し、理論上の限界に迫る速さで計算を行うことができれば、生命体の情報処理能力はこれまでの常識を根底から覆す可能性があるという、非常に革新的な発見となるのです。

もしこの観測結果が正確であれば、いま世界中で研究・開発競争が激化している量子コンピュータの性能ですら到達が難しいような“演算速度”を、自然に存在する細胞がすでに実現しているかもしれない——まさにそう考えざるを得ないほど、衝撃的な発見だといえるでしょう。

もちろん、生命体という高温多湿な環境で、これほど繊細とされる量子コヒーレンス(重ね合わせ状態)が失われずに維持されるのかという疑問は、長年にわたって論争の的でした。

量子現象は一般に、絶対零度に近い極低温や真空の状態でないと“デコヒーレンス(量子状態の破綻)”を起こしやすいと考えられてきたからです。