たとえば、宇宙に存在する無数の粒子やフィールドは、相互作用するたびに論理演算のような“状態の更新”を重ねており、その積み重ねがこの宇宙における歴史を紡いできたという考え方です。

中でも興味深いのは、観測可能な宇宙がこれまでに実行してきた計算の総数が10の120乗にも達するのではないか、という大きな推定値が提示されている点です。

これは通常の桁感覚では想像すら難しいほど膨大な数字ですが、宇宙の年齢やエネルギースケール、そして光速やプランク定数などの基本定数を組み合わせて考えると、そのような途方もない数になる可能性が理論的に示唆されているのです。

さらに驚くことに、地球上で長い歴史を経て進化してきた真核生物——つまり私たち人間を含むすべての動植物、菌類といった生きもの——が、ある仮定のもとで計算すると、その宇宙全体の推定値のおよそ平方根に匹敵する情報処理を担っているのではないか、という上限的な仮説もあります。

仮に宇宙全体の演算回数が10の120乗規模だとすると、その平方根は10の60乗ほどです。

私たちには依然として大きすぎる数ですが、それでも宇宙全体に比べればかなり小さいように思えます。

しかし、生物が環境情報を取得し、分子レベルでエネルギーを変換し、遺伝子情報を複製し、さらに細胞同士で複雑なコミュニケーションを行ってきた総体が、それほど膨大な規模の“情報処理”になっているかもしれないという指摘は、多くの科学者たちの好奇心を強くかき立てているのです。

そうした背景の中で注目を浴びているのが、細胞の構造を支えるタンパク質繊維と光の相互作用における“量子的”なふるまいです。

具体的には、紫外線領域の光(高エネルギーの光子)を使ってタンパク質を励起したときに、多数の分子があたかもひとつの巨大な振動子であるかのように連動して光を発する「超放射(スーパーラディアンス)」という特殊な現象が確認されています。