それでも、もしこの原理をうまく使ってスケールアップできれば、「地球が回り続けるかぎり、燃料を補給しなくても電気が得られる」という、従来の常識を超えたエネルギー利用の可能性が開けるかもしれないのです。
しかしこれまでに実際にこの効果を検証しようとした研究はどれも上手くいきませんでした。
たとえば、装置の形状が理論で想定される“正しい中空構造”から外れていたり、微小電圧を測るには極めて敏感な測定が必要なため、ゼーベック効果(温度差による起電力)や周囲のノイズを取り除くのも難しかったのです。
それでも、「もし実験でちゃんと微弱な電流が確認できれば、地球の自転をエネルギー源にできる」という夢が研究者たちを駆り立ててきました。
小規模ではあっても“燃料不要の電源”となりえる可能性を秘めているからです。
しかし地球の自転からエネルギーをとりだすことなど本当にできるのでしょうか?
地球の自転をエネルギーに変える研究

地球が自転しながら維持している磁場を利用して、本当に電気を取り出すことはできるのだろうか?
この大きな疑問に迫るために研究者たちが用いたのが、マンガン亜鉛フェライトという特殊な素材で作られた円筒形の部品でした。
最大の特徴は、中が空洞になっている点です。
イメージとしては、飲み物を吸うときに使うストローを思い浮かべてください。
ただし、その素材は一般的なプラスチックとは大きく異なり、磁石の性質をもちながら電気もある程度通すという、非常にユニークな性質をあわせ持っています。
この円筒を実験に使う理由は、地球が自転していることで生じる“磁場とのわずかなずれ”を逃さず捉え、微弱な電圧や電流を生み出せる可能性があるからです。
ふつうは、磁場を生み出す側(地球)と導体(電気を通す物質)が一緒に回ってしまうため、電子の流れが打ち消されて電気が発生しにくいとされています。