磁場と導体が同じ速度・同じ方向に動いている以上、相対的な“ずれ”がほとんど生じないため、電子が動くきっかけ(ローレンツ力)が極めて小さくなり、結果として目に見える電流がなかなか発生しないのです。

地球の磁場と電気を通す物質がほとんど同じスピード・同じ方向で動いているため、ふつうは電子の移動が“帳消し”になりやすいと考えられてきました。

そのためこのアイディアは実現不能と考えられていました。

しかし、近年になって「磁場と導体を完全に同じ動きにせず、わずかなずれを作りだすようにすれば、打ち消されずに電気が生まれるのではないか」と考えられるようになりました。

地球の磁場と電気を通す物体を上手い具合にズレて配置させるわけです。

具体的には、たとえば中が空洞になった筒の形を使ったり(導体の内部で磁場が違う経路をとりやすくなる)、磁場を通しやすいのに電気もほどほどに通すような特殊な素材を選んだりといった工夫を凝らすことで、「導体と磁場が完全に固着して動いてしまう状態」を回避できる可能性があります。

こうすることでわずかながら相対運動が維持され、結果として少しだけ電子が流れ続ける――つまり極微量ながら電圧や電流を生み出し続ける、という理論が提案されました。

言い換えれば、「地球が回転しているからこそ、導体の中の電子が常に少しずつ動かされる状態になり、そこから電気を取り出せる」可能性があるということです。

まるで“完全に貼り付いていたはずの磁場と電気を通す物体のあいだに、細い隙間を意図的につくってあげる”ようなイメージを持つとわかりやすいかもしれません。

その隙間を通して、普通なら打ち消されてしまう電子の動きがわずかに残り、そこから微弱な電流が生まれ続けるわけです。

さらに理論上は、「そんな装置が地球の自転の勢いをほんの少しだけ奪う」形でエネルギーを取り出すとも解釈できます。

いわゆる“自転にブレーキがかかる”という言い方をすることもありますが、もちろんごくごく微小なので実際には観測が難しいほどの変化です。