中空構造や素材の特性を活かすことで、地球の自転エネルギーを微弱ながら電気として取り出す――この研究は、その第一歩を印象的に示したといえるでしょう。

今後は、さらに透磁率や導電率を最適化した素材の開発、システムのスケーリングアップなどの研究が進むことで、“燃料不要の電源”という新たな可能性がどこまで広がるのか、大いに注目されます。

この結果が革新的なのは、「軸対称な地磁気と一緒に回転しているはずの導体からは、電気なんて取り出せない」という昔からの常識を覆した点にあります。

いまのところ得られる電圧や電流はごく小さいですが、「地球が回り続けている限り、微弱でも連続的に電気を生み出せる装置が実際にある」という発見は、とてもわくわくするものです。

将来もっと工夫を重ねれば、“燃料を使わない電源”として活躍する可能性があるかもしれません。

地球の自転エネルギーを“収穫”する未来

地球の自転から電気を取り出す仕組みを開発:なお使いすぎると?
地球の自転から電気を取り出す仕組みを開発:なお使いすぎると? / Credit:Canva

今回の研究が何より注目に値するのは、「地球が持つ大きな回転エネルギーを、わずかとはいえ電気へ変換できる仕組みが実験で確かめられた」という点にあります。

従来は“軸対称な磁場と導体が一体で回転してしまうと電流は打ち消されてしまう”と考えられていたため、「地球の自転から電力を取り出す」アイデアは長らく不可能視されてきました。

ところが今回の結果は、その常識に小さくとも明確な例外を提示し、地球規模の自然現象を微力ながら直接活用できることを示唆しています。

もちろん、得られる電圧や電流は現状では非常に小さく、今すぐに実用になるわけではありません。

ですが、ここで示された原理をさらに発展させれば、たとえば複数の円筒シェルを組み合わせて電圧を増幅したり、より透磁率や導電率を高めた新素材を開発したりと、スケールアップの可能性が開けるかもしれません。