平年収穫量の設定は、検討会の委員による口頭の意見をもとに、最終的には官僚が決定するという旧態依然とした体制で運用されている。そのため、判断は主観的かつ不透明である。技術進歩の反映にも定量的な基準が存在せず、異常気象に対する評価も十分ではない。このような手法では、統計学的に求められる客観性や再現性が確保されず、バイアスの混入リスクが高まる。農水省による閉鎖的な運用では、政治的な意図による介入も自由自在である。
アメリカに学ぶ先進的手法
アメリカでは、日本の農水省と同様の現地実測に加えて、衛星データ(気象・土壌・葉緑素など)や農家からの報告も統合し、生育状況を週次で更新・検証している。広大な農地を対象としながらも、約2,000のサンプルで効率的かつ高精度な予測を実現しており、統計手法としては層別サンプリングを活用している。これに対し、日本の農水省は依然として坪刈り調査に過度に依存しており、気象や土壌条件、生育状況といった動的要因を統計に十分反映できていない。その結果、作況予測に誤りが生じても、その原因を特定することが困難である。
アメリカでは、当年の収量予測にとどまらず、線形トレンドモデルを用いて将来の収量トレンドも予測している。過去100年にわたる収量データや技術進歩の影響を加味し、コメについては年平均で1エーカーあたり約70ポンドの増加が見込まれており、2034/35年度の生産量は2億5,200万cwtと推定されている。日本においても、将来のコメ生産量は国民の食と農に直結する重要な関心事である。科学的かつ透明性のある予測に基づいて、信頼されるコメ業界の構築が求められている。
コメの作況調査・改善案一覧
① 層別分析の導入 品種や地域ごとに収量の分散を層化し、特に作付面積に応じてサンプル数を適切に割り当て、層内のばらつきも統計的に補正する。恣意的なサンプル数の設定を改め、アメリカの手法に倣って効率性と精度を高めることで、科学的な収穫量予測の基盤を構築。異常気象下でも信頼性の高い推定を可能にする。