調査対象は日本全国の幅広い年齢層で、合計約2,500人が参加しており、男女比や地域分布も国勢データに近づくように工夫されています。
Study 1:多彩なテーマでの比較
最初の実験(Study 1)では、研究者たちは一度に12のトピックを扱うという大胆なアプローチを取りました。
中国やロシアが関連する政治・外交問題はもちろん、アメリカ国内の社会問題や日本の政治課題など、多岐にわたるテーマです。
そのうえで、それぞれのトピックに対して「権威主義的な主張を押し出すストーリー」と「リベラルな視点に基づくストーリー」を用意し、参加者をランダムにグループ分けして提示しました。
ここで注目されるのは、ストーリーの出所を明示するかどうかが条件によって異なる点です。
たとえば「これは中国政府の公式見解です」と示す場合と、あえてソースをぼかす場合とで、説得力がどう変わるかも同時に検証されています。
結果として、「権威主義を擁護するストーリー」を提示されたグループは、民主主義を批判的に見る方向に意見が動く傾向が強まりました。
一方、「リベラルな視点のストーリー」を読んだグループは、予想どおり民主主義的な立場を支持するようになりました。
ただし、ストーリーの出所が権威主義国家だと明言されても、説得効果が大きく下がらないことが示された点は意外といえます。
Study 2:二つのナラティブがぶつかるとき
続く追加実験(Study 2)では、リベラルなストーリーと権威主義的なストーリーを同時に提示して、現実のネット環境に近い複雑な状況を再現しました。
さらに「どちらのストーリーを先に見せるか」といった提示順もランダムに変化させ、参加者がどの程度どちらの主張を受け入れるかを観察しています。
結果として、二つのストーリーを同時に見せられると全体としては互いの効果が相殺される傾向が見られました。
しかし、後から提示された権威主義的ストーリーが強く残るパターンも確認されています。