日本といえば「民主主義を尊重する先進国」というイメージを、多くの人が思い浮かべるのではないでしょうか。

ところが、日本の早稲田大学(Waseda Univ.)で行われた2つのオンライン実験によって、私たち日本人は想像以上に、中国やロシアなどの権威主義国家が発信する“ストーリー”に説得されやすい可能性があることが明らかになりました。

民主主義の国で暮らしているのだから、もっとリベラルな物語のほうを支持するはず──そう考えるのが普通かもしれません。

しかし実験結果では、自由主義的な主張よりも、権威主義を正当化・称賛するような物語のほうが、私たちの意見を大きく動かすケースがあるのです。

いったいなぜ、民主主義が当たり前の社会で育っているはずの日本人が、権威主義国家の発信する物語に惹かれてしまうのでしょうか。

しかも、そのようなストーリーの出どころが「中国政府」や「ロシア政府」であると明示されていても、その効果は大きく下がらないといいます。

この研究は、私たち自身の思い込みを揺さぶり、さらに「日本人の心は意外と自由主義じゃないのかもしれない」という問いを突きつけてきます。

私たちが当たり前と思っている「民主主義的な考え方」がどれほど脆く、そして権威主義国家の巧みな語り口がどれほど強力かを改めて考えさせられるかもしれません。

では、私たちはこうした結果をどのように受け止めればいいのでしょうか?

研究内容の詳細は『Democratization』にて発表されました。

目次

  • SNS時代に加速するプロパガンダの脅威
  • 日本人の心は自由主義よりも権威主義に魅力を感じる
  • 日本の自由は脆いのか?

SNS時代に加速するプロパガンダの脅威

日本人は自由主義より権威主義的なストーリーのほうに説得力を感じてしまう
日本人は自由主義より権威主義的なストーリーのほうに説得力を感じてしまう / Credit:Canva

中国やロシアといった権威主義国家が、ソーシャルメディアや自国メディアを通じて海外世論を直接動かそうとする試みが近年ますます盛んです。