その点から見ても、下段の世界経済政策不確実性指数はきわめて重要です。新聞というオールドメディアの典型から以下の条件で記事の本数を抽出したデータなので軽視される方も多いのですが、1997年に公開し始めてからの切れ味は抜群です。

世界経済政策不確実性指数とは、購買力平価で算出した世界GDPの約3分の2を占める主要21ヵ国の有力紙から、経済、経済的といった単語と、行政府、立法府、中央銀行といった政策主体を示す単語と、不確実性を意味する単語が同時に出現した記事の本数を集計して指数化したものです。

ご覧のとおり、第1次トランプ政権の誕生時には、この指数は9・11事件や国際金融危機の頃よりは高かったものの、コロナ騒動の時期や第2次トランプ政権発足時に比べると、はるかに低い水準にとどまっていました。

贈収賄が合法化されたアメリカに清廉潔白な政治家や官僚はひとりもいません。ですが、当時のトランプ政権主要閣僚は、どこをどう操作すれば連邦政府を動かすことができるかを知っていた「おとな」の政治家や財界人で構成されていました。

それに比べて、今回のトランプ政権はトランプ教の信者や、トランプ教信者を装っておいしい利権にありつこうとする利権亡者ばかりで、主要閣僚中で州レベルの政府を動かすすべを知っている人間でさえ、フロリダ州下院議長と同州選出の連邦上院議員を務めたことのあるマルコ・ルビオ国務長官ひとりだけと言っても過言ではありません。

御大トランプ以下、イーロン・マスク、ピート・ヘグセス、JD・ヴァンスといった面々の軽挙妄動がどれほど深刻にアメリカ経済を撹乱し始めたかを論ずる前に、米株過大評価の具体例として時価総額のGDPに対する倍率から見ていきましょう。

すでに2024年末で過大評価・過小評価の一応の分岐点とされる1倍を大きく超える1.7倍程度になっていたアメリカの時価総額対GDP倍率は、2月19日に史上最高値で引けた時点では1.93倍に上昇していました。