しかし、不動産数件とは比べものにならないほど大勢の人間の生活がかかった交渉で、目まぐるしく態度を変えるのは、トランプ個人のみならずアメリカ連邦政府が、実務担当者や相手国の混乱に対する思慮を100%欠いた交渉主体だと宣言したも同然です。
次の2段組グラフ上段は、対カナダ・メキシコ、そして対中国の新しい関税率の実施について、何度も態度を変えたあげく、結局3月4日(つまりこの発言の翌日)から「予定どおり」実施すると発言したときの市場の反応を示しています。
そして下段は、2月19日の史上最高値以来ダラダラと下げていたS&P500株価指数が、この発言をきっかけに下げ足を速めたことを示しています。明らかに株式市場がトランプに突きつけた警告でしょう。
しかし、その警告に対するトランプの反応は「株式市場は見ていない。アメリカ経済はこれから短期的な調整に入る」というそっけないものでした。
反トランプ姿勢を鮮明にした連邦準備制度
ちょうどこの時期に、12の連邦準備銀行の中でGDPの短期予測を担当しているアトランタ連邦準備銀行が、現在進行中の2025年第1四半期のGDP成長率予測を大幅に下方修正したのは、偶然の一致でしょうか。
つい4週間前までは前期(2024年10~12月)に比べて3.9%の成長と見ていた今年1~3月のGDP成長率を、先週は1.5%の縮小、今回はなんと2.8%の縮小と、マイナス成長の幅をさらに拡大したわけです。
この予測を弾き出している過程では、トランプの関税についての迷走ぶりはまだ完全に把握していなかったでしょうが、とにかく第2次トランプ政権最初の四半期は、顕著な経済収縮になると宣言したのです。
これはアトランタ連銀経済調査部の一存でやったことではなく、連邦準備制度全体が「粗野でがさつで、教養もなく、知的能力も低い」トランプ政権に対して宣戦布告をしたようなものだと思います。