また検出器の多くは暗黒物質はWIMP(弱く相互作用する巨大な粒子)という仮想上の粒子であるとの仮説に基づいて作られています。

(※WIMPの存在が確認されれば、それは暗黒物質の正体の一端を明らかにすることになります)

またWIMPは、私たちが知る自然界の4つの基本力のうち、弱い核力と重力の影響を受けると考えられています。

つまりWIMP が存在する場合、原子核と相互作用するはずであることを意味します。

たとえるなら、海に浮かぶ小さなボートが波(重力)と風(弱い核力)の両方に影響を受けるように、WIMPもこれらの力に反応すると考えられています。

そのため既存の検出器はWIMPが原子核と衝突するときに発生する特定の信号、例えば小さな閃光やエネルギーの放出を検出するように設計されています。

暗黒物質の検出装置
暗黒物質の検出装置 / Credit:東京大学

しかし、これまでのところ、WIMPは発見されていません。

研究者たちは暗黒物質が検出されていない理由について、暗黒物質が弱い核力を全く感じない、つまり風(弱い核力)に影響されずにただ波(重力)だけに動かされるボートのような性質を持っている可能性を示唆しています。

その場合、重力が通常の物質との唯一のつながりとなります。

そして重力だけが唯一のつながりだとすると、理論上、暗黒物質の誕生は最初のビッグバン時に限定されなくなり、独自の誕生ルートを描くことが可能になります。

目に見えない兄弟が存在する場合、彼らが同じ誕生日によって生まれた双子であるか、別々のタイミングでうまれた普通の兄弟であるかを判別することができないのと同じです。

そこで研究者たちは、既存の観測結果をベースに、暗黒物質が作られたルートに対して新たな理論を組み立てました。

すると、通常のビッグバンの数週間後に「暗黒物質による2度目のビッグバン」が起きた場合に、現実の観測データと最もよく一致する結果になることが判明します。